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(PDF) 自動注射器研修Q&A (2022/02/13版)
化学テロにおける神経剤解毒剤自動注射器の使用に関する研修トップページに戻る

医学的事項について
No設問回答
1小児に適応がないがどうすればよいか?オビドキシム含有自動注射器については、18歳以下に対しては、十分な医学的検討がなされていないため適応は18歳以上に限定されている。プラリドキシム含有自動注射器については、体重41kg以上が適応である。現場で18歳以上であるか、41kg以上であるかの判断は難しいため、現実的には大人相当の体格か否かの観点から適用を判断する。自動注射器の使用はあくまで応急処置であり、原則として迅速に除染し、医療につなげることが最も重要である。判断に迷うような場合は、注射に固執することなく、迅速に除染し医療につなげることを念頭に救助活動を行うことが重要である。
2妊婦への投与は可能か?妊婦への使用における胎児への安全性の情報は極めて限られているが、妊婦の生命が重大な危機に瀕した状態にある場合、母体の救命のため、解毒剤の投与は許容されうる。なお、アトロピンについては、妊娠初期の使用について、胎児毒性がないことが判明しているが、オビドキシムについてはデータがない。
3神経剤等による影響を受けていない傷病者に自動注射器を使用した場合の身体への悪影響はあるのか。アトロピンによる影響により頻脈、口喝等の症状が発生する可能性がある。健常者に対しても手術の前に軌道分泌の抑制を目的に投与することもある薬剤であり、比較的安全性は高いが、心疾患を有する患者等では不整脈を誘発するリスクがある。
4投与禁忌者や慎重投与該当傷病者に対して自動注射器を使用しても問題ないのか。アトロピンの投与禁忌・慎重投与の患者は、神経伝達物質(アセチルコリン)の影響が抑制されると症状が悪化するため、医学的に投与すべきではない者であるが、神経剤の影響下では、当該神経伝達物質の影響が生命の危機に陥るほど過剰な状態であるので、投与禁忌者に投与したとしても原疾患が悪化することはない。また、投与禁忌者は救急疾患患者であり、テロの現場に偶然居合わせる可能性はほぼゼロに等しい。そのため、現実的には投与禁忌・慎重禁忌について考慮する必要がない。
5注射による刺入部位からの神経剤等の侵入が危惧されるが、それ以上に注射器使用にメリットがあるという認識でよいか。使用判断モデルに基づく自動注射器の使用の対象者は、サリン等の揮発性の神経剤・有機リン製剤等を想定しており、その主たる吸収経路はガスの吸入である。一方で、皮膚等が汚染されている場合は、経皮吸収による症状の悪化が懸念されるため、速やかな乾的除染を実施する必要がある。注射に伴う皮膚の損傷はごくわずかであり、化学剤による汚染が明らかである場合を除き、注射部位を門戸に症状が悪化することは想定する必要はない。
6レベルAのPPEを着用している場合、自動注射器を打つことによるPPEの損傷をどう考えるか。自動注射器が必要ということは、既にPPE内部が汚染されているということなので、PPEに自動注射針によって小さな穴が開いたとしても問題ではない。
7注射後の注射部位の出血を止める必要はあるか。通常、出血はごく少量であり、自然に止血するため止める必要はない。大腿部外側には大きな血管は少なく、大量出血に至るリスクは非常に小さい。
8解毒剤を2本以上打つことは可能か。その場合、打つのは同側か。反対側か。自動注射器による解毒剤投与は応急処置の一環であることから、現場対応者としては、基本的には1本を投与し、迅速に救助・除染を行い、医療につなげることが最も重要である。自動注射器の仕様上は、状態が悪い患者には最大3本まで投与することができるが、1本投与後の症状の改善の判断には医学的判断を伴うことから容易ではないため、追加投与は原則的には医師等の判断が望まれる。一方、迅速な救助ができない、医療に迅速につなげることができないなどの特殊な状況においては、救命のため、明らかに症状の改善がみられない傷病者に対しては、最大3本まで打つことは許容される。なお注射部位についても専門家の助言を仰ぐ必要がある。
9自動注射器を打った場合、その効果は臨床上どのようにわかるか。臨床上、劇的に改善するわけではなく、急に涙、流延が止まるわけではない。進行を止める程度である。だからこそ迅速な搬送が重要であり、自動注射器の使用はあくまで応急措置の一環と考える必要がある。
10オビドキシムとプラリドキシムの違いは。オキシム剤には、オビドキシム、プラリドキシム(PAM)、トリメキシム、HI-6など様々な種類が存在し、神経剤の種類により、薬理学上、その活性は異なる。しかし、実際のヒトにおいてどのオキシム剤が最も有効であるかについては確固たる科学的エビデンスは存在しない。そのため、一般的理解としては、大きな差はないと考えて差し支えない。
11神経剤により動けなくなる機序は。神経伝達物質であるアセチルコリンの作用が過剰になることにより、重症例においては、筋肉が硬直する。更に呼吸・循環障害(ショック)、意識障害も生じるため。
12心肺停止になった場合、アドレナリンの使用と解毒剤の使用は関係するか。関係しない。心肺停止となれば、救急救命士の場合は、定められた手順に従ってアドレナリンを投与する。
13神経剤で解毒薬を使用した患者は、入院後どうなるか。重症度によってその後の経過は異なるが、重症であれば集中治療を要し、人工呼吸器管理となる。エイジングにより、長年にわたって後遺症を残す場合もある一方で、軽症で一時的な症状から完全回復する場合まで、重症患者であっても予後には幅がある。
製品について
No設問回答
14薬の半減期はどの程度か。薬剤の半減期に関する基礎的データはあるが、半減期と効果の発現の程度・期間は必ずしも一致せず、半減期で薬剤の再投与を判断すべきではない。
15自動注射器の使用期限はどれだけか。使用する自動注射器により異なる。それぞれの製品の説明をご覧いただきたい。
16針の長さと太さはどの程度か。使用する自動注射器により異なるが、一般に、針のゲージは21-23G、針の長さは2cm程度である。詳細についてはそれぞれの製品の説明をご覧いただきたい。
17TrobigardとDuoDoteは、効果に差があるのか?TrobigardとDuoDoteは大きな差がないとされている。但し両者の一番大きな違いは、Trobigardのオビドキシムが脳・血液関門を通過するのに対し、DuoDoteのプラリドキシムは通過しないことである。なお、双方に配合されているアトロピンは、脳血液関門を通過する。
18TrobigardとDuoDoteの打ち分けはして良いか?地域の実情や実働部隊の事前の検討において、専門家と相談し、2種類の特性を理解した上で、十分に検討した上で、打ち分けや使用の優先順位をもうけることは差し支えない。
手技について
No設問回答
19解毒剤自動注射器を使用した際に、数秒程度で傷病者の大腿から針が抜けてしまった場合にどうすればよいか。針を刺して直ぐに針が抜けてしまった際には、別の注射器によって再度実施してよい。判断がつかなければ、専門家の助言を得ながらも、原則的には、再度注射することは避け、迅速な救助、搬送に努める。ただし、救出、搬送が何かしらの理由でできないような状況においては、2本目の使用も考慮される。その場合には、標準手順を逸脱するため、専門家の助言を仰ぐ必要がある。また、注射部位についても専門家の助言を仰ぐ必要がある。
20分厚い服装の場合は、針が損傷する可能性はあるか。針は、21Gで長さが約2センチである。レベルAのPPEやジーンズなど厚手の衣類でも、容易に貫くことができる。垂直に打つことにより針の損傷を防ぐことができ、筋肉深部に打つことが出来る。斜め打ちはしない。
21何らかの理由で大腿外側中央部(もしくは大腿前外側中央部)に解毒剤自動注射器を使用できない場合はどうすれば良いか。大腿外側中央部(もしくは大腿前外側中央部)以外の部位は、神経損傷や出血のリスクが高いため、医療従事者以外が注射を行うのは危険である。現場対応者による自動注射器は使用困難であるので、早期救助、除染、搬送に努める。
22自動注射器を打つ際に傷病者が動いてしまう場合に備えて、他の者が傷病者の体を保持するべきか。可能ならば保持できると良いが、人的余裕がある場合に限られる。
23モデル研修では伏臥位を背臥位にして、注射するが、側臥位、あるいは回復体位で打った方が、痛みにより逃避される可能性が少ないのではないか。適切に大腿外側中央部(もしくは大腿前外側中央部)に位置する大腿四頭筋に対して、大腿神経を回避し、適確に垂直に打つことができるのであれば、回復体位で打つことも可能であるが、回復体位では、筋と神経の解剖学的位置関係が変化するため、神経損傷を回避できるかの判断は難しい。そのため、研修においては最も基本的で神経損傷を回避できる仰臥位に体位を変換する方法を標準的方法として示している。
24実験動画で空のペットボトルには10秒かからず薬液が噴出しているが、実際の注射で10秒保持する理由は何か。筋肉内への注入は抵抗があってさらに時間がかかることから安全域をとって10秒にしている。
判断について
No設問回答
25隊員に神経剤の自覚症状が現れた場合であっても、自力で動けなくなるまでは解毒剤自動注射器は使用してはいけないのか。部隊員の自己注射に関しては、使用判断モデルは適応しない。部隊それぞれの従来あった使用基準を用いる。よって症状が出現した時点で自己注射する。自力で打てる間に打つ。動けなくなるまで待つ必要はまったくない。
26「傷病者への説明や同意の取得が往々にして困難である。」とあるが、説明は不要であるのか。使用判断モデルの手順に基づき注射の対象となる患者は生命が重大な危機に瀕した状態であり、本人が正常の判断を下せる意識レベルにあるか否かの判断を行うことは困難である。その意味で、必ずしも同意は必要でない。ただし、本研修資料の記載の通り、自動注射器の使用にあたっては、注射の前に注射を行うことについて患者への呼びかけを行ってから注射を行うこと。
27傷病者が自動注射器による解毒剤の投与について、明確に「NO」の意思表示をした場合は、どうすればよいか。使用判断モデルの手順に基づき注射の対象となる患者は、生命が重大な危機に瀕した状態であり、傷病者が正常な判断を下せる意識レベルにあるか否かの判断を行うことは困難であり、基本的には、救助における応急処置の一環として投与を行う。ただし、傷病者の意識が自身の意思を正常に表出できるほど明瞭であると考えられ、明確に拒否の意思を示している場合において、複数の隊員間もしくは現場に臨場した医師等により、その意思が確認できる状況であれば、投与を差し控えても差し支えない。
28解毒剤投与と除染のどちらを優先すればよいか。基本はDDABC、つまりDrug⇒Decontaminationの順であるので、解毒剤投与を優先する。しかし、自力歩行可能であり、除染を迅速に行い、早期に医療に繋ぐことが出来る状況下であれば除染を優先してもよい。
29救助と自動注射器による解毒剤投与の優先度のバランスに目安はあるか。救助人員(供給)と要救助者(需要)との人数的なバランスによって判断するのが現実的である。直ぐに救助ができるバランスなら救助を優先し、直ぐには傷病者の救助ができない状況では汚染染域でも即刻解毒剤の注射を実施したほうが良い。解毒剤投与に人が割かれることで救助が遅れることは本末転倒である。自動注射器による現場での解毒剤の投与は応急処置として、早期の医療提供へのつなぎとして考えることが肝要である。
30現場に臨場した医師が専門家か否かの判断境界はどうするのか?ドクターカーやドクターヘリで臨場した医師は、通常は専門家とは言えないことが多いと考えられるが、専門性を有する医師が臨場するケースも想定される。専門家の助言として扱ってよいかは、臨場した医師本人に確認が必要である。医師自身がその責務を負うことに合意すれば、専門家の助言としてみなしてよい。
31医療救護班等の医師等が臨場した場合、コールドゾーンにおける解毒剤自動注射器の使用にかかる優先度の判断等は医師等が行うのか。現場の需給バランス次第であるが、臨場した医師等が自動注射器使用の優先順位に関するトリアージができる状況であり、医師がトリアージの実施に同意をすれば、医師等に委ねても差し支えない。
32非汚染地域で傷病者が多数発生することにより、解毒剤による医療介入に対する需要が、臨場した医師や看護職員による医療提供能力を上回り、医師や看護職員による迅速な対応が困難である場合かどうかを実働部隊が判断しても問題ないのか。臨場した医師や看護職員と相談の上、決定すべきである。
33専門家の助言について、助言に基づいて判断を行うのは誰か。各部隊の長である。専門家は、想定される原因物質とその可能性、自動注射器を用いるべき状況であるか否かについて、助言を与えることができることが求められる。専門家が自動注射器を用いるべき状況と判断できない場合には、部隊において独自に解釈し判断を行う必要はない。
34国家備蓄されている自動注射器を、神経剤特有の症状を発症した隊員が自ら使用することは可能か。自動注射器を自ら使用することは医師法違反とはならない。国家備蓄の対象は、化学災害・テロの被災者であり、隊員自らが被災者となった場合には、当然使用することは許容される。
35化学剤を含んだdirty bombの場合、外傷も生じるが、使用判断モデルのテロの蓋然性「爆発や傷病者の出血がない」の文言を如何に考えるか?化学剤を含んだdirty bombは稀と考えられ、3つの条件が揃わない場合は、専門家の助言を仰ぐ必要がある。
36症状の確認で、ハンカチで鼻、口、目を押さえていると記載されているが、ハンカチだけで良いのか、それともハンカチを除去して、鼻汁、流延、涙を確認すべきか。傷病者の個々の状況で判断するのではなく、全体で判断する。そのためわざわざハンカチを除去する必要はない。
37複数の傷病者が存在する場合には、重症度順に打つのか。動けなくなった傷病者が最優先であるが、その中で重症度の順位付けを行い、時間を労することは本末転倒である。基本的には対象者に対しては優先順位付けを行うことなく、順次使用していくことが望ましい。ただし、使用可能な注射器の数に限りがある場合は、救命可能であるが救助から搬送までに時間がかかることが想定される者を優先して使用してよい。
382本目の自動注射器を使用する判断は。自動注射器の使用は治療行為ではなく応急処置である。基本的には1本を打ち、迅速に搬送することを第一に考えるべきである。2本目の使用は救出、搬送が何かしらの理由でできない場合に考慮されるので、専門家の助言を仰ぐ必要がある。実際の現場では、症状の変化の経過を追う余裕はなく、1本目の効果によって、2本目の投与を判断することは現実的ではない。
39複数隊が活動している場合、専門家の助言は、包括的な助言と考えて良いか?専門家の意見は、1つの現場に対する包括的な助言と考えるべきである。傷病者一人一人に対する個別の助言ではなく、また可能な限り部隊毎に個別に助言を求めるべきではない。助言内容については、組織間、部隊間で共有することが望ましい。合同指揮所が立ち上がればそこで共有する。
40解毒剤の対象者として、歩けないことは必要絶対条件か?歩けるか歩けないかの確認は必要か?第一優先は手助けがないと自力で動くことができない者である。ただし、わざわざ歩けるかどうかの確認をする必要はない。倒れていて、とても自力で歩くことができそうもないと判断されれば対象者とみなして差し支えない。
41使用判断モデルにおける化学剤検知器について、機種の限定などはあるか。機種については限定しておらず、各部隊が通常所持している神経剤を検知することができる検知器(イオンモビリティスペクトロメトリー等)を使用することが前提である。
42神経剤が起因となった可能性が極めて高い心肺停止状態の傷病者に対して、自動注射器を使用して良いか?また、投与した場合効果はあるか?化学剤によるCPAは安易にトリアージで黒にせず赤にする。薬剤投与してCPRすることによって回復するケースがあるためである。よって状況により心肺停止傷病者に対する自動注射器使用は認められる。
43解毒剤自動注射器の取扱説明書には、症状が重い場合(意識障害、呼吸障害・呼吸不全、全身痙攣、尿・便失禁)、3回まで投与が可能と記載がある。体格の大きい者には2本投与することも考慮した方が良いか?体格で投与量を変更する必要はない。何かしらの理由(搬送に時間がかかるなど)により、2本目を打つ場合は専門家の助言を仰ぐ。
事故時の対応について
No設問回答
44誤って自動注射器の針が自身や他の隊員に刺さってしまった際にはどのように対応するのか?防護具の損傷と考えて、迅速に現場を離脱して傷病者として扱う。使用済みの針が刺さった場合には、使用した傷病者の血液由来の感染症のリスクがあるため、医療機関において検査が必要である。
廃棄について
No設問回答
45使用後の自動注射器は、誰が廃棄するのか。また、感染性廃棄物として廃棄しなければならないのか。自動注射器使用後の管理、確認方法については、各部隊により状況が異なることから、画一的な指針は示していないが、自動注射器の所有者の責任において廃棄する必要があるため、所有する機関に問合せいただきたい。使用した自動注射器は使用した患者の血液が付着しており、感染性廃棄物として扱う必要がある。原則的には各部隊において、感染性廃棄物として処理する。
46開封した解毒剤自動注射器は使用しなくても廃棄するのか。開封済みの医薬品は、汚染リスクが伴うため、廃棄する。廃棄した医薬品については、記録を行い、報告することが求められる。
解釈上の疑義について
No設問回答
47専門家の助言について、専門機関を独自に選定してかまわないのか。独自に選定してかまわないが、助言を行う専門家(専門家を有する専門機関を含む。)は、実働部隊の照会に基づいて、1.想定される原因物質とその可能性、2.自動注射器を用いるべき状況であるか否か、の2点について助言できる医師であることが必要である。助言を行う専門機関は、こうした専門家を有し、事案発生時には、専門家が助言を行うことができる体制を有することが必要である。特に大規模イベント等のテロの蓋然性が高まる期間中に24時間いつでも迅速に対応できる体制が整備されており、上記の助言を実施できる専門知識を持つ専門家と実働部隊との間で事前に合意しておくことが望ましい。
48救急救命士は非医師等に該当するのか。医師 又は看護 職員で ない化学災害・テロの現場対応を行う 実働部隊に所属する公務員( 消防隊員、 警察官 、 海上保安官 及び 自衛官) を非医師等と定義している。そのため、そのような実働部隊に所属する公務員たる救急救命士は、非医師等に該当する。
49自己注射用として購入している自動注射器を傷病者に対して使用して問題ないのか。自己注射用に保持していたとして、現場に医師等がおらず、化学災害・テロによる重症患者が発生していると考えられる状況下において、医師法上の違法性は阻却されると考えられる。
50研修を受けていない部隊員は自動注射器を使用することができないのか。原則的には受講していることが望ましい。しかしながら、現場において、自動注射器が存在し、目の前に生命の危機に瀕した傷病者が存在するが、未受講者以外に自動注射器を使用する者が存在しないような状況においては、未受講者が自動注射器を使用したとしても、医師法上の違法性は阻却されうると考えられる。
51神経剤ではないのに使用した場合に、その責任はどうなるのか。誤用した場合の責任の所在は。本使用手順の判断モデルは、専門家による検討を経て、神経剤の使用が極めて濃厚と考えられる状況における使用を想定した標準手順であり、本手順を遵守して使用した場合については、医師法上の違法性が阻却されうると考えられる。判断モデルを誤用した場合はその限りではない。
運用について
No設問回答
52自動注射器を医師以外が使用することについて、医療機関に対し十分に周知されているのか。都道府県及び日本医師会に対し、通知を発出しており、周知がなされている。
53自動注射器はどこに備蓄され、どのように配送されるのか。保有する各機関により備蓄場所や運用は異なるが、一般に、危機管理用医薬品の保管場所については、公開されていない。配送については関係省庁間で協議される予定である。国家備蓄については、各管轄の省庁を通じて要請をいただきたい。
54自動注射器の現場への配送はどのように要請すればよいのか。保有している機関によって異なるが、国の国家備蓄については、監督官庁を通じて要請をいただきたい。
55現場に配送された自動注射器の管理責任者は誰なのか。現場に配送された自動注射器について、合同指揮所が設置されている場合は、合同指揮所の現場指揮官において、管理者を決定し、分配を含めて管理する。合同指揮所が設置されていない状況においては、使用を想定する各部隊に分配後、分配された各部隊の現場指揮官が管理を行う。
56注射の記録はどこまで求められるのか?傷病者の救命のため解毒剤の投与が最も優先されるべきである。一方で、使用薬剤の管理は重要であり、最低限、使用数量の管理は必要である。なお、傷病者の個人レベルの投与記録は、検証に有用であり、可能な限りの範囲で記録を行うことが望ましい。最低限、誰に対し(氏名又は識別コード等)、何本使用したか(通常は1本)記録することが望まれる。なお、可能な限りで記録が望ましいその他の事項は、注射実施者、凡その使用時間、ロット番号である。なお、各機関の人的・物的リソースが異なるため、本標準研修コースでは、実際の記録手法に関しては提示していない。なお、本行為については原則メディカルコントロールの検証対象ではない。
57「NBC テロその他大量殺傷型テロ対処現地関係機関連携モデル」における「図1 救助・救急搬送、救急医療体制連携モデル」では、救急搬送活動に解毒剤自動注射器の使用は位置づけられていないが、医療機関へ傷病者を搬送中、救急車内で非医師等が自動注射器を使用することは可能か。一連のNBC災害活動において、災害現場以外の投与状況(救急搬送活動等)を個別具体的に想定することは困難であるが、医師等が存在せず、「化学災害・テロ時における医師・看護職員以外の現場対応者による解毒剤自動注射器の使用に関する報告書」(厚生労働省化学災害・テロ対策に関する検討会)に定める要件を満たしていれば、医師法の違法性は阻却されると考えられる。しかし、傷病者の迅速な救命のためには、指揮官が速やかに要件を確認、判断し、災害現場で早期に解毒剤自動注射器を投与することが望ましい。
58解毒剤を打ったあと、どこの医療機関へ搬送すればよいか。搬送すべき医療機関のリストはあるか。リストはない。重症であれば救命救急センターが適切であるが、搬送時間を要するのであれば、時間が勝負であるので、近くの救急医療機関を選定することはありうる。地域としての体制構築が重要。
59自組織で、独自に自動注射器を購入することは出来るか。購入は不可能ではないが、未承認薬であるため様々な制限や注意事項がある。監督官庁の担当者に確認願いたい。
60事後検証は必要か?必要であれば、検証はどのよう体制で行うことが望ましいか?テロ・特殊災害事案への対処の観点から検証はなされるべきものである。但し、本行為についてはメディカルコントロールの範疇ではないため、MC協議会による検証は必要ない。
一方で、検証体制は構築していくことが望ましい。そのためには、各実動部隊等や都道府県は、必要に応じ地域の病院前医療における専門家及び化学テロの専門家等に協力を求め理解が得られるような体制作りをすることが望ましい。また、円滑な検証体制の構築のため、厚生労働省は、専門家リストの更新を実施し、各実動部隊を所管する省庁等への情報提供を行う。
61解毒剤自動注射器の副作用を許容するならば、化学剤の存在しうる場所へ進入する際に、予め自身に投与することで、防護服の破綻等の事故が発生した際の隊員の症状悪化防止となりうるのか?副作用で活動が制限されるため予防的な使用は行ってはならない。脈拍上昇、散瞳しながら活動できない。
研修について
No設問回答
62研修を開催した場合には、報告義務があるか。監督官庁から研修修了者についての照会がなされる場合はあるが、開催毎に報告する必要はない。
63研修を開催する場合、標準研修教材の使用について版権は発生するか。厚生労働科学研究費を使用して作成された教材については、無償で公開されており、インストラクターが使用して教育を行うことは可。
64研修開催時に、各機関にあわせて研修内容を修正したり、独自の研修教材を用いてもよいか。「化学災害・テロ時における医師・ 看護職員 以外の現場対応者による解毒剤自動注射器の使用に関する報告書」(厚生労働省化学災害・テロ対策に関する検討会)における研修概要に準拠する形であれば、研修内容の修正や独自の研修教材を用いることは構わないが、基本的解釈については、本モデル研修に準拠する必要がある。各機関における修正が必要と想定されるのは、主に、実際の作戦行動上の観点に関する観点と考えられる。
65各部隊における研修において医師による担保は必要ないのか。専門性を有する医師のもとでインストラクターの養成を行っており、インストラクターは各部隊の部隊員を指導するに足る知識・能力を身に着けたと判断された場合に限り、研修修了証を発行している。そのため、インストラクター講習を修了した者の指導によりコースを修了した場合は、「化学災害・テロ時における医師・ 看護職員 以外の現場対応者による解毒剤自動注射器の使用に関する報告書」(厚生労働省化学災害・テロ対策に関する検討会)に定める「必要な講習」に相当する講習を修了したと解される。
66研修実施時に、講師として医師の要請は可能か。可能である。監督官庁の担当者にご連絡いただきたい。
67自動注射器のトレーニングキットは入手可能か。業者が販売しており、購入可能である。詳細は、監督官庁の担当者に確認願いたい。
68解毒剤自動注射器の訓練用資機材は、エピペントレーナーにより代用可能か。構造上、使用方法が異なるため、代用できない。実際に部隊での使用が想定される自動注射器のトレーナーを使用することが望ましい。
69インストラクターの認定証は発行されるか。認定は行わないため、認定証の発行は行わないが、インストラクター研修の受講修了証が発行される。
70受講者の認定証は発行できるか。認定は行わないため、認定証の発行は不可であるが、受講修了証を発行して差し支えない。
71一定期間後に再研修を受講する必要はあるか。部隊の研修の一環として組み入れ、一定期間毎に再受講することが望ましい。
72インストラクター研修者用の講義教材、マニュアル、理解度確認問題、実技チェックリスト、Q&A集等は所属内で教育訓練を実施するために使用可能か。厚生労働科学研究による成果物であり、その引用を行うことで使用可能であるが、改変を行う場合は厚生労働省に確認されたい。インストラクター講習の資料を改変なくそのまま使用する場合は許可を得る必要ない。
73実技評価の際は、装着する防護具は面体と手袋で充分か?実技評価で面体と手袋を装着するのは、視野が狭くなること、コミュニケーションがとりにくくなること、自動注射器のハンドリングが難しくなる状況下で適切に運用できるかを評価する意味合いがある。このため、実技評価時には、面体と手袋(レベルC以上)を用いて、実際の現場と同様の視野と手元の制限を行ったうえで実施することが望ましい。全身の防護具を使用することで、より現場の状況に近づけることは可能であるが、必ず体幹部の防護具を装着しなければならないわけではない。
74インストラクター養成にはどのような方法があるか?現時点におけるインストラクター養成方法については、各実動機関を保有する省庁等へ問い合わせをされたい。なお現状考えられる方法としては以下のとおりである。
1 厚生労働省リスト掲載されている医師等の専門家に依頼
2 日本中毒情報センターに依頼
3 インストラクター研修評価者がいる実働部隊に依頼

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